はなちゃんのみそ汁 番外篇

亡き妻のブログ「早寝早起き玄米生活」アーカイブから

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本物を作る人々

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「知らない」は恐ろしい

千恵の肝臓は半分近く、がんで埋め尽くされていた。

肝臓は、体によくない働きをする物質を無毒化する大切な臓器。日常生活に支障を起こすような自覚症状が出るころには、肝臓疾患がかなり進行してしまっている、というケースも少なくない。肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるのはそのためだ。

千恵は、親しい友人や身内から、お見舞いに菓子をいただくことが多かった。

にっこり笑って、裏のラベルを確認。

これは危険、と感じたときは決して口にはしなかった。

含まれる食品添加物が致命傷になりかねないからだ。

健康な人には問題ない量であっても、肝機能が弱っている人にとっては、どんぶり一杯の添加物を体に入れているようなもの。

 

2008年6月、使える抗がん剤がなくなり、自宅で食事療法に最後の望みをかけて病と闘っているときだった。肝機能の低下で黄疸が出て、言葉もしゃべれなくなった千恵に、介護に訪れた彼女の母親が、添加物まみれのゼリーを食べさせていた。

その場で、僕が「添加物が肝臓に与える影響」をあわてて説明してみても、義母は「あなた、何言ってんの?」という表情になる。義母も娘のために一生懸命だ。やかましく言うと角が立つ。「知らない」とは、本当に恐ろしい。

 

そうは言っても、今の世の中、添加物を避けることはほぼ不可能。

ならば、生活の質を落とさずに、食べ物と上手に付き合うことが大切なのではなかろうか。

あまり神経質になると暮らしが楽しくない。

知ってて食べることと知らないで食べることは天と地ほどの差がある。

心にブレーキを持っているか、持っていないか。

健康である人は、食の功罪を知ったうえで、食べればいいのだ。

自炊生活に軸足を置き、ほどほどにジャンクを楽しむ。

ビールを飲みながら、ポテチをつまむのは最高だ。

もちろん、「ほどほど」を忘れずに。

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2007年9月、肝臓の断面画像を見ながら、主治医の説明を受ける千恵(右)

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乳がんが発病して7年目。使える抗がん剤も残り少なくなっていった

以下、2006年12月18日に千恵が書いたブログ「本物を作る人々」。

この頃の千恵は、食や農の本を読みあさり、講演会をはしごするなど、食への探究心が旺盛だった。かなりストイックな生き方をしていた。

日々、口にする食べ物が彼女の命に影響を与えかねない状況だったから「本物を作る人々」との出会いは、うれしかったに違いない。

 

本物を作る人々(2006年12月18日)

 

病にはならない方がいいけれど、

私はがんになった後の方が確実に濃い生き方をしている気がしている。

特に再発してから、「本物」の生き方をしている人々に出会う機会が増えてきた。
何故だろう?

多分、今自分が追求していることの方向に、そういう人たちがいるということなのだろう。

人生のベクトルが、そちらへ向いているということだ。

さきほど玄関のチャイムが鳴って、荷物が届いた。鳥取からだった。
先日、とある講演会場で出会った水産物を扱っている小倉さんという女性の方からだった。

その時は「喜びのある食品作りをしています」という言葉を、さらっと聞いてしまっていた。
が、荷物を開けて、中身を見て、本当に心から感激した。
その言葉が、本物であるということが改めて理解できたからだ。

普段から、添加物のない本物の食品を取り入れるように気をつけているので、本物の食品を見る目は次第に肥えてきている。

小倉水産食品さんからの食べ物の中にも、添加物は一切入っていなかった。
じゃこがたっぷり入った小倉水産名物「じゃころっけ」、いわしのハンバーグ。
かにクリームコロッケ、いわしの生姜煮と梅煮。全て、手作り添加物なし。
中でも一番感激したのは、「いかの塩辛」と「するめの糀漬」

大抵、この手の瓶詰め食品には、ありとあらゆる添加物が含まれていることが多い。
うにの瓶詰めなどは、原材料を見ると、うにより添加物の方が確実に多い。
何カ月も持つのは、膨大な量の保存料と添加物のお陰だ。

小倉水産さんの「いかの塩辛」の原材料は、するめいかと食塩。
するめ糀漬」の方は、米こうじ、いか、胡瓜醤油、みりん、唐辛子。

先代の小倉弥三郎さんによれば、「いつまでも腐らない食品なんて気色悪い。生命をもった有機体が腐るのは当たり前のことだ」。

信念を持った人が作る物は、いつの時代も本物だ。

先代はこうも言っている。
「いかの塩辛は生き物。お宅の冷蔵庫に入ってからも生き続けていると考えていただきたい」

生きているうちに、ありがたくいただくことにしよう。

小倉水産食品さんの将来に、幸あれ。
小倉恵子さんとご主人の素敵な笑顔も見られます。