略奪愛だった
本に書いてない話がいくつかある。
そのひとつ。
僕が千恵と出会った頃、千恵には付き合っている男性がいた。
お互いに実家の両親に紹介し合って、結婚の約束もしていた。
詳しくは割愛するが、いろいろとあった。
最終的に千恵は、僕を選んでくれた。
つまり、略奪愛なのだ。
だが、運命とは皮肉なものである。
付き合い始めてすぐ、千恵に乳がんが発症。
僕と出会わなければ、彼女はがんにならなかったのかも、なんて考えることもあった。
2006年12月21日、千恵のブログ「がんと恋愛事情」を読んだ。
ざわざわしていた心が少し落ち着いた。
この日のブログ、もしかしたら、僕に向けて書いてくれたのかもしれない。
がんと恋愛事情(2006年12月21日)
乳がん・子宮がんと、女性特有のがんには、告知後に最大の難関が待ち受けている。
女性に生まれたからには、誰だって恋愛をしたい。結婚もして、子どもだって産みたい。
でも、私のように若年でがんになったほとんどの人は、それをあきらめることが多い。
私の場合は、告知、手術、抗がん剤治療を受けた後に、当時付き合っていた彼と結婚した。
治療の合間をうまくぬって、子どもにも恵まれた。でも、 世の中は、そういう人ばかりではないということが徐々に分かってきたのは、告知後間もなくのことだった。
私は、それに関しては、ツイていた。
そうとしか、思えない。
ある人は、がんと告知された直後に男性側から婚約解消された。
またある人は、告知の後にご主人から全く協力を得られずに離婚。
本当に苦しい思いをした人だっている。恋愛・結婚問題ばかりではない。
女性側の立場にたって書いているが、逆もまた然り。男女に関係なく、がんになったというだけで、女性から逃げられたり、職場からのひどい仕打ちや、解雇される人だってたくさんいる。
そもそも、がんという言葉自体が、差別用語としてまかり通ることもある。
「あいつは会社のがんだ」とか。
がんになっただけでも苦しいのに、がんと言う病気は、なった後の方が苦しいことが多いんだな。
でも、もし、旦那が先にがんになっていたとしたら?
一緒に乗り越えて、支えて、結婚できただろうか。
私に、そんな大仕事ができたかどうか、わからない。
旦那には、改めて感謝しなければいけない。旦那に言わせれば、感謝の気持ちを行動にはあんまり移してないらしいけどね・・・^^;
そもそも、がんが理由で相手を突き放す人とは、人生を一緒に乗り越えていくことなんてできないと思う。がんは一例であって、人生には、他にも多くの困難が待ち受けているからだ。
それに、がんを一緒に乗り越えてきたからこそ、今までやってこれた。がん様様なのである。
がんになったくらいで突き放すようなオトコは、その人の何を見ているのだろうかと思う。「そんな人はこっちから願い下げ」。そのくらいの勢いで、辛い思いをしてきたがん患者さんには、ぜひとも乗り越えてほしいと思う。
そして、恐れずに恋をしてほしい。
受け止めてくれる人は、必ずいるはずだから。
何をするにも、あきらめたらそこでおしまい。
夢を現実に変えていくのは、自分の思いと行動しかないから。