ユーモアで包み込んだ指摘
こいつ、なかなかやるなあ。
僕の入院をネタにした千恵のブログを読んで、そう思った。
当事者にとってはつらい話であるが、当事者が読んでも笑えるのだ。
ディスられていることを感じさせないユーモア。
手術の不安が薄まり、免疫力も高まる。
がん患者のブログ。
そこには痛みや苦しみを伴うことが多いが、それらを感じさせない軽やかな文章。
暮らしに笑いがあれば、困難を乗り越える気力が湧く。
千恵はブログを通して、がん患者やその家族を笑わせたかったのだろう。
2007年2月、千恵が綴った「ネタ探しの旅」には、患者側から病院に向けた指摘も盛り込まれている。普段から感じている不満を、嫌味なく、さりげなく。
直球で書いてしまうと、場が荒れる。
だが、そうした指摘をユーモアで包み込むと、読み手は腹を立てることなく素直に受け止めることができる。
センスがいい。
こいつ、なかなかやるなあ。
ネタ探しの旅(2007年2月28日)
突然ですが、本日、夫が入院しました。
とは言っても、事故でも病気でもなく、以前から予定していたものです。
ちょっと外科的な手術をするのです。腎臓にトラブルを抱えている彼は、それをしておくと、今後の調子が良くなるであろうというので、チャレンジすることにしたのです(説明が長くなるので割愛)。
彼の名誉のために書いておきますが。
Erecyile Dysfunction(ED)の治療ではありません。
さて。
病院って、本当に面白いものですね。
まず、午前中に受け付けをしないといけないというので、病院まで送りました。
入り口に車を寄せて、「じゃあ、いってらっしゃい」と言う私。
「ちょっと待てお前!!病室まで普通はついてくるもんだろ?!お前の時なんか、毎日病室まで通ってあげたじゃないか」
九州男児のくせに、意外とねちっこいのね。まあ、でも、人間、人にしてあげたことはいつまでも覚えていますが、してもらった方はあっさり忘れているもんです。
しぶしぶついていくことにしました。
入院の受け付けを済ませて、入院患者待合室へ通されました。
みんな、暗い顔をしています。
すると、小森のおばちゃまみたいなおばちゃまが、アメリカのモールに置いてあるような大きなカートを持ってルンルンで迎えに来てくれました。
「さあ、あなたも荷物を乗せなさい」と、私に言うのです。
マスクをしていたので、患者と間違われたようです(笑)
そうして、スキップしながら病室まで案内してくれたおばちゃま。
長い道のりをへて、エレベーターで西病棟へ着いた途端。
ガラガラガラ~っ
「あららら~ごめんなさいねぇ」
横を見ると、旦那がおばちゃまのカートにひかれて足をヒクヒクさせていました(笑)
「カートにひかれるなんて、初日からついてないよ」
旦那は、不満顔です。
私は、爆笑。
無事に病室についたので、 一旦自宅へ帰ることに。
手術の説明を受けるのと、家族の同意書を書かなければいけないので、午後3時にまた戻ってこなければなりません。
病室を出て、エレベーターに乗り込んだら、白衣美人が乗っていました。
お医者様のようです。
「ぐうたら主婦の私と違って、キャリアウーマンなんだ。すごいな」と心の中で思いつつ、ふと彼女の手元に目がいきました。
カルテとともに大事そうに抱えていたその本のタイトルは・・・
「医学辞典」
彼女、大丈夫でしょうか?
と思っている最中に、今度は30代後半くらいのこれまた若い医師が勢いよく乗り込んできました。
白衣の下には、薄緑のコスチューム。額には汗がにじんでいるような。
どうやら、オペの直後のようです。
ドスンとエレベーターを揺らして壁に寄りかかり、難しそうに顔をしかめています。
1階に着くと、人の波を掻き分けて降りていき、激しく右に左にフラフラしながら歩いていってしまいました。
オペ、失敗したのでしょうか・・・。
いろいろと気になること満載でしたが、この調子だと10日間退屈せずにすごせそうです。
自宅で家事をすませて昼食を食べ、また病院に戻りました。
3時からと言っていたのに、呼ばれたのは4時。
時間が守れないのは、どの病院も同じのようです。
医師の説明は「手短に」と言われた通りにすぐに終わりました。
「よろしくお願いします」と一礼し、また病室へ。
しばらくすると、「手術室担当の者です」と、若い医師がやってきました。
きゃ~!かっこいい!坂口憲二みたいな男前です。
語尾に「ちゃ」が入るところをみると、北九州市方面の出身のようです(関係ない)。
彼が病室に来てくれるなら、毎日通っても損はありません。
そんな彼に、夫は、「できたら今すぐにでも切ってください」と不可能なお願いをしていました。
手術は明日の午前中。
夫の順番は3番目なんですが、さらに夫は彼に、「できたら1番でお願いしたい」と懇願。
嫌なことは早く終わらせたい心境なのはわかりますが、困った人ですね。
彼も、苦笑いしていました。
目の保養ができることがわかったので、帰りの足取りは軽いものです。
明日は、ドレスを着ていかなければ。
その後も、保育園のお迎え、夕飯の準備、お風呂、とバタバタとしていたら。
さきほど、夫からメールが入っていました。
「やっぱり明日、早めに来てもらえんやろうか。主治医が手術の同意書を忘れていたらしい。お前に書いてもらわなければ手術できないそうな」
何のために今日2度も病院に通ったんだ?
って話です。
忘れんでほしい。
っていうか、この主治医で大丈夫なんだろうか・・・。
今後の夫の運命は、いかに?!
後半へ続く・・・