やさしい空気に包まれて
涙を流しながら語り合い、最後は全員、笑顔で締めくくることができた。
家族らとの死別を癒やすグリーフケアについて考えるワークショップ「大切な人を亡くした後、あなたはどう生きますか」。会場を提供してくれた六本松蔦屋書店には、死別体験者やグリーフに関心を持つ人ら約30人が集まった。
涙をポロポロとこぼしながら、8年前に亡くした母親との思い出を語る女性。妻をがんで亡くし、男手ひとつで2人の娘を育てている会社員。3年前に父親を亡くしたという大学生は「父といい関係ではなく、残そうとしてくれたことを受け取れなかった。こちら側に引き継ぐ姿勢や熱意がないと何も受け取れないと気づいた」と打ち明けた。
重い病の祖母と離れて暮らしている大学生は、近い将来の別れと向き合い、大切な人とどう生きるかを考えたという。「おばあちゃんのみそ汁が大好き。作り方を教えてほしくて、会いに行った」。
参加型のワークショップは一方通行の講演会と違って、双方向の対話によって成立する。正直なところ、人が集まるのだろうかと不安でいっぱいだったが、ふたを開けてみると、会場には定員を超える参加者が集った。
参加者の年齢層は10代から70代の男女。
情報を知って東京から駆けつけたという会社員男性もいた。
「子を亡くし、部屋に閉じこもりがちだった」という女性は、僕のフェイスブックを見て申し込んでくれた。「死別を語り合うワークショップは、参加しようと思っても、なかなか足が向かなかった。今回は事前にSNSでやりとりができたので、安心できた。これからも続けてください」と感想を語った。
会場全体がやさしい空気に包まれていた。
悲しみを語り合っているはずなのに、みんなが目を潤ませながら笑っている。
悲しんでいい。悲しみに寄り添う社会。悲しむことは愛すること。
このような寛容な場が、もっと、もっと、世の中に広がればいい。
ワークショップを終え、本にサインを求められた。
ペンで何を書こうかと考え、ふと思いついた言葉が、「悲しみを生きる力に」。
帰り際、数人から「千恵さんが作り出してくれた場でしたね」と声をかけられた。
素直にうれしかった。
目に見えない千恵と参加者の皆さんがつながって一緒に作り出した場でもある、と僕は思う。
※本日、千恵のブログ紹介はお休みします。