涙の理由
その日、友人たちが手料理を持ち寄り、わが家のバルコニーに集まった。
がん闘病中の千恵は、珍しく、ほんの少しだけお酒を飲んだ。
ほろ酔いの千恵は上機嫌だった。三線を持ち出し、「童神」を歌った。
日も暮れて、台所で片付けをしていると、そこに千恵がいないことに気づいた。
はなと一緒に探した。
千恵は襖の向こう側の和室で横になっていた。
「どうしたの?」
理由を聞くと、千恵は涙声で答えた。
「みんなが片付けをしてくれているのに、体がきつくてできない。普通のこと、あたり前のことができない自分が情けなくなってしまって。ごめんね」
4歳のはなにも伝わったのだろう。
小さな手で千恵の頭をなでていた。
自分のためにも生きてください(2008年1月17日)
本日は、年に数回訪れるブラックホールに入る日。
※造影剤を注射して行うCT検査
何度体験しても嫌なものは嫌。
昨夜からブルー。
でも、ブルーになったからと言って食欲が減るはずもなく。
でも、ブルーになったからと言って食欲が減るはずもなく。
昼ご飯は食べられないから、朝ご飯をヤケ食いしました^^;
それは、いつでも、誰にでも訪れる時間。
闇の中で、もがきます。
寝たきりで、家族のために、お客様のために、お茶一つ煎れてあげられなかったあの日。
家事がまともにできなかったあの日(注意:今もまともにできてないけど 笑)
両親、夫、子どもに負担をかけてしまったあの日。
身体にあったものが、突然なくなったあの日。
できていたことが、できなくなったあの日。
社会から置いてけぼりにされたような、疎外感を味わったあの日。
声が出なくなったあの日。
食べることができなくなったあの日。
エトセトラ、エトセトラ。
そして、ブラックホールから、どのように抜け出したらよいのか。
わからなくなったあの日。
でも、闇の中に、必ず小さな明かりが灯されます。
決して一人じゃないこと。
支えてくれる人がいること。
あなたが生きていることで、励まされている人がいること。
あなたが生きるためなら、自分の命さえ惜しくない人がいること。
いつも思い出さなくていいから。
こころのすみっこでいいから、止めておいてください。
私は、あなたが作ってくれたコサージュを今日も襟につけ。
ゆうゆうと、スキップしながら、ブラックホールに吸い込まれてきます。
写真も盗み撮りしてこようかな。
どうせするなら、検査も入院も治療も楽しく、ね。