手作りの指輪
妻がどこかで紛失したとばかり思っていた。
僕が25年前の彼女の誕生日にプレゼントした手作りの指輪が出てきたのだ。
2000年1月27日、仕事を終えた僕は、取材で知り合った鋳金作家の工房に向かった。彼の指導で銀粘土をリング状に成形し、窯で焼成。焼き上がった銀の指輪を徹夜で研磨した。翌日、25歳になった彼女にピカピカに磨き上げた指輪を手渡し、僕は「結婚してほしい」と伝えた。
妻が他界した後、その指輪は、どこを探しても見当たらなかった。
先日、自宅マンションのリフォームの際、靴箱の中を雑巾で拭いているときだった。
奥の方に、妻が好きだった紅茶のケースがあった。
ふたを開けると、中に指輪が入っていた。
黒く変色していたが、それは紛れもなく、僕が彼女に渡した銀の指輪だった。
あの日を思い出した。
古くなった指輪で申し訳ないけど、
あらためて、受け取ってほしい。
いつかまた、僕と結婚してください。
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