互いの命をたたえ合う
妻千恵の追悼コンサート「いのちのうた 第16章」を終えた。
コンサート翌朝は、起き上がることができなかった。
正直疲れた。事業としては、採算も合わない。
だが、僕にとって、これほど生きていることを実感できるイベントは他にない。
千葉から来てくれた女性は「夢のような時間だった」とメールを送ってくれた。
「はなちゃんの物語を中学の道徳の授業で知った」という世代の女性は、「こういうことだったのですね」と興奮気味に語った。京都と大阪から駆けつけた女性2人は「来年も絶対にやってください。必ず、ここに来ますから」と、言い残して会場をあとにした。
SNSで僕の元気な姿を見て、「どうしたら、死別の悲しみを克服できるのですか」と尋ねる人もいる。答えになるかどうかはわからないが、自分の経験ならば、伝えることができる。
外に出て、楽しいことを考えて、おいしいものを食べて、大いに笑って、歌って過ごす。
妻が遺してくれた「涙から立ち直る方法」だ。
それらはすべて「いのちのうた」の準備から開催当日までの期間に凝縮されていた。
最後の主催者あいさつで、来年も開催することを会場の皆さんに約束した。
イベントの趣旨は「追悼コンサート」だが、故人を偲ぶだけの会ではない。
私たちの命を互いに「たたえ合う」音楽会。
そして、最後に全員で「JUMP」する。
悲しみや苦しみ、生きづらさを抱えている人たちに、「そうか。こういうことなんだ」と、心穏やかに過ごすヒントをつかんでもらえたら、これほどうれしいことはない。
以下、本日紹介する千恵のブログ。
涙から立ち直る方法(2007年5月7日)
先月採ってきたヨモギに根がつきました^^
さて。
午後から、先日日記にも書いた、がんの患者さんのご家族に会いに行ってきました。
ここ2カ月の間に、検査、告知、ステージの告知、余命宣告、入院、手術・・・と立て続けだったみたいで、本当につらい日々だったことと思います。これから治療方法などが決まっていくでしょうし、まだまだ、つらい日々は続いていくのだろうかと想像しただけで、私も切ない気持ちになりました。
それと同時に、自分が一番最初に告知を受けた日々のことを思い出したりもしました。
告知の場所こそ違うけれど、 がんの患者は、寄り添える部分が多々あります。
身体の一部を失う悲しみ、苦しみ。
治療の苦しみ。
一生抱えていかなければならない、再発・転移の恐怖心。
ご家族から、「千恵さんは、どうやって立ち直ったのですか?」と聞かれたのですが、うまく答えることができなくて申し訳なかったです。
でも帰り道、ショパンのピアノコンチェルトを爆音で聴きながら、いろんなことを考えながら帰ってきましたが。
立ち直る方法って、言葉でうまく言えないけれど、やっぱり、時間の経過なのかもしれない、と思ったりしました。
また、再発の時は、ムスメが毎日「しっこ漏らしたー。うんこが出たー」状態だったので、それもよかったのかな、と^^;
つまり、そのこと(病気のこと)ばかりを考えていたら、つらいんですよね。
体力が許すならば、外に出て、楽しいことを考えて、おいしいものを食べて、大いに笑って、歌って過ごす。それも大事なことだと思います。
仕事に没頭するのもいい。
趣味があると、もっといい。
かく言う私も、告知を受けた当初は、病気のことしか考えられなくて。
つらくて、苦しくて。
長い長いトンネルを抜けるのに、どれだけ時間を要したかわかりません。
でも、いつの間にか、そこの部分(つらい、苦しいばかりの日々)からは抜け出せている自分がいます。
たくさんの支えと、学びを受けながら、ここまでたどり着いたんだろうし、これからも後ろを振り返らずに前だけを向いて歩まなければ、と思い直した次第です。
がんを抱えている多くの患者さんが、苦しみから抜け出せることを祈りながら。
追記:病を克服した人に会うのは、免疫力がかなり上がりますよね。
どちらさまも、下のボタンをうっかりクリック。