はなちゃんのみそ汁 番外篇

亡き妻のブログ「早寝早起き玄米生活」アーカイブから

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妻が怒った日

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千恵からのメッセージ

今年2月、亡き妻千恵の親友、稲森奈津子さんから手紙が届いた。
「はなみそ青春篇」を読んだ感想と、はなの誕生日を祝う内容。手紙の最後には、千恵のブログ(2007年5月28日の日記)が貼り付けてあった。
末尾には、こう書かれていた。
 
最後に一つ。1月末にちょっと驚くようなことが起きたので、それだけお伝えします。
たまに使用するPCのメール下書き欄に、1通のメールが急にポン!と出てきて「あれ? ここになんか残してたっけ?」とクリックしたら、下記のような内容が貼り付けてありました。
下書きタイトルは「千恵からのメッセージ」。
流石にびっくりして、内容を読んでみたら、確かに10年以上前に「これは大事に残しておこう」と思って、千恵の「早寝早起き玄米生活」のブログからその文章をコピーして、PC保存していたものでした。
でも、いつもは残したりしていない下書き欄にこの文章だけがポン!と出てきて、普段起きないようなことが起きて、久しぶりに鳥肌が立ちました。(中略)
天国にいる千恵が、私に「しっかり子育てしなさいよ」と伝えたかったのかな、と思いました。この時のブログは、もしかしたら削除されているかもしれません。なぜなら、千恵が珍しく怒っていた時のブログだったから。信吾さん、読んだことあるかな?
 
15年前、僕も読んでいた。
読みながら、途中で涙があふれそうになったことも、はっきりと覚えている。
以下、その日の千恵のブログ。
 
怒りを覚える 〜人をうらやましがってはいけない〜(2007年5月28日)
 
私は滅多に怒らない。
 
でも、今朝はめずらしく、怒った。
 
 
こんな怒った感情のままでは、午前中を気持ちよく過ごすことはできないので、書こうかどうしようかぎりぎりまで迷ったが、またこのようなことを思われるのも嫌なので、思い切って書くことにした。
 
 
どういうことかというと、「あなたはいいな、うらやましい」と、一部の人から思われているようだ。
 
「家族がいていいな、仕事もできていいな、ご飯が食べられていいな、、、、」
 
「いいな、いいな」と、どこまで思うおつもりだろうか。
 
 
何をどう基準に、人のことをうらやましがるのか。理解に苦しむ。
 
 
私は、決して、他のがん患者さんをうらやましがったりしない。
 
 
ブログ村」に登録しているので、他のがん患者さんのブログも読ませていただいている。
 
がんの友達も、たくさんいる。
 
再発している人も、していない人も、人のことをうらやましがったりする人は、いない。
 
 
みなさんそれぞれに、病の場所は違えども、苦しみながらも前向きに一生懸命生きている。
それを読んで、私もまた更に前向きになっているのだ。
 
 
もちろん、がん患者さんに限らず、人のことをうらやましがるのは、やめている。
 
 
誰しも、隣の芝生は青く見えるものだ。
 
 
私がどういう経緯でがんになり、手術をし、再発をし、治療をし、仕事をやめ、家族を抱え、どんな気持ちで、これまで過ごしてきたのか。詳細に書いたとしても、その方に理解はしてもらえないのだろうかと思うと、怒りを通り越して、脱力さえする。
 
 
人はみな、必ず何かを抱えて生きている。
 
 
私はそれが、たまたま「がん」だっただけで。
 
 
がんになってから、人からの悩みを打ち明けられる機会が増えたように思う。
それは、いいことだ。
力にはなれないことが多いが、話だけだったら、いくらでも聞くことはできる。
自分が経験してきたことで、困った人が救われるならば、こんなにうれしいことはない。
 
 
 
それはそれは、みんな、大きなものを背負って生きているということが、わかる。
 
 
 
でも、どう生きるかは、その人次第だ。
 
 
悩みがあっても、抱えている物が大きくても、笑顔で乗り越える人。
 
乗り越えられなくても、さらに踏ん張って生きている人。
 
 
山ほど知っている。
 
 
 
人のことをうらやましがってばかりで、何もしない人は、大嫌いだ。
 
 
後ろ向きに生きるのか、前向きに生きるのか。
 
それが、人間の生きる道の分かれ道。
 
 
前原の酵素風呂の先生は、こう言った。
 
 
「思い悩むな。思い悩んだら、本当にその通りになる」と。
 
 
再発するかもしれない、転移をするかもしれない。
 
がんの患者さんなら、誰しも抱えている悩みだ。
 
でも、「そればっかり考えて生きていたら、本当に再発する。
死ぬ準備ばかりしている人は、本当に死にます」と、先生は説く。
 
 
大いなる勘違いをしている人がいる。
 
 
どの親から生まれるとか、生まれた国とか場所とか。そんなのは宿命で決まっているので、自分の力ではどうにもならない。
 
 
でも、運命は、自分で切り開くことができる。
変えることだって、いくらでもできるのだ。
 
 
毎日、自分の布団で眠ることができて、ご飯が食べられて、道を歩いていても銃で撃たれることもなくて、ちょっとでもいいから仕事ができて、社会とつながりが持てて。
 
 
そんな幸せな日本という国に生まれたことが、幸せだと感じられない人は、今銃撃に苦しむ国に一度行けばいい。
 
 
毎日の食べ物さえ食べられなくて、飢え苦しみ、死ぬ子どもたちがいる国に、一度行けばいい。
 
 
私は、幸せだ。
 
 
がんでも、こうやって毎日目を開け、人と出会い、支えられ、生きている。
 
 
旦那に何か起こったら?
 
ムスメが20歳になるまで生きていけるのか?
 
不安だって、いっぱいあるんだ。
 
 
それを、表に出すか出さないかの違いだ。
 
 
厳しいことを書きました。
公の場に、こんな怒りの気持ちをぶちまけてよいのかどうかも、迷いました。
この日記は、怒りのマイナス感情100パーセントなので、そのうち、削除します。
 
怒りの気持ちは、肝臓に、悪いからね。
 
 
でも、本当に、人のことをうらやましがるのは、金輪際やめにしてほしい。
 
 
何度も言うけれど、人は必ず何かを抱えて生きていかなかればいけない生き物。
 
自分の苦しみに、人を巻き込んではいけない。
 
どんなに苦しい状況になっても、立ち上がるのは、自分。
 
 
いくら周りが元気づけたところで、自分の中に「よいしょ!」と立ち上がる力がなければ、絶対に起き上がることはできない。
 
 
今持っている自分の命を大事に思えない人は、今、必死で生きていこうとしている人に、命をあげてください。
 
人生に、今後何が起ころうとも、
 
絶対に、あきらめてはいけない。
 

千恵の追悼コンサート「いのちのうた」で歌う稲森さん(2009年10月31日)撮影:広田敦子さん

追記

「絶対」という断定的な言葉が何度か出てくる。

人を悪く言ったことのない千恵が「嫌いだ」と書くことも珍しい。

当時、その相手が誰なのか、僕は聞かなかった。

千恵に対する嫉妬だろうか。

まだ、TwitterFacebookも日本では浸透してなかった時代。

これが度を越すと、誹謗中傷に変容していくのかもしれない。

現実、今の僕たち親子には、そのようなことが起こっている。