すべては、ここから始まった
「同業他社の枠を越えて付き合ってもらえませんでしょうか」
2009年の春。深夜、1通のメールが届いた。
金子元希さん。朝日新聞西部本社の記者からだった。
出会って3カ月が過ぎた6月14日。
朝日新聞に「小さな手、朝の台所」「亡きママと『約束』」という見出しで、僕たち家族を取材した記事が掲載された。
手のひらにのせた豆腐に包丁を落とすはな。隣で僕が見守る。
親子が立つ台所の写真が添えられていた。
その夜、パソコンを立ち上げて目を疑った。
僕が引き継いだ妻のブログのアクセス数が、1日で8万件を超えていたのだ。
すべては、ここから始まった。
あれから13年。
今春、金子さんが、僕たちの「その後」を取材してくれた。
2022年9月22日。記事が配信された。
丁寧で緻密な取材。聞く力と筆力。ペンの勢い。確かな事実関係。
そして、何よりも、彼の気持ちが入った記事。
胸が熱くなった。