「悲しき3号線」
高校時代、車で事故を起こし、剣道部をクビになった。
目指していた「玉竜旗全国高校剣道大会」には出場できなくなった。
小4から続けていた剣道が、青春のすべてだった。
生きる目的がなくなるほどの喪失感だった。
真夜中に、仲間たちとバイクで国道3号線を走りながら、ロックバンド「ARB」の「悲しき3号線」を大声で歌った。集合場所は、いつも、3号線沿いにある「英ちゃんうどん本店」(宗像市徳重845)だった。お金がないので価格が一番安い「かけうどん」。うどんが見えなくなるくらい煮昆布とネギと天かす(いずれも無料)をぶっかけて食べた。
大学入学当初は、遊んでばかりだった。
だが、そこで、同郷の先輩に出会い、僕は再び竹刀を握ることになった。
その先輩からは「お前のようなクズは見たことがない」と言われ、性根を叩き直された。
剣道とアルバイトに明け暮れた4年間。
大学の成績は悪かったが、奇跡的に卒業できた。
就職先は、「玉竜旗全国高校剣道大会」を主催する新聞社だった。
20代後半、事業局から編集局に異動。
サツ回り、宗像支局などを経て、運動部へ。
デスクが、玉竜旗取材班のキャップに指名してくれた。
僕は男女の決勝戦を任され、取材した。紙面に記事が大きく掲載された。
千恵と結婚したのは、そのころだ。
彼女は、声楽を学んでいたが、クラシック、沖縄民謡、洋楽、Jポップなど何でも好んで聴いた。僕は、あらためて、彼女に音楽の素晴らしさを教えてもらった。
ヒートウェイヴのベーシストで、public bar.Bassicを経営する渡辺圭一さんと出会ったことがきっかけで、福岡を拠点に活動するロックのレジェンドたちと顔見知りになった。
今年2月、ARBの創設メンバーでもあるKEITH(キース)さんとつながった。
KEITHさんは拙著「はなちゃんのみそ汁」を自分で購入し、読んでくれた。
高校時代から憧れていた伝説のロックバンドのドラマーである。
信じられなかった。
そして、昨夜、かつてARBのボーカルで、今は俳優としても活躍する石橋凌さんのコンサートに行った。今回の全国ツアーでベースを務めるBassic.の渡辺さんが誘ってくれたのだ。
先日、北九州市から福岡市に戻る途中、3号線沿いの「英ちゃんうどん」で昼食をとった。
娘のお土産に煮昆布を買った。それがまだ、冷蔵庫に残っていた。
今夜はARBと石橋凌さんの最新アルバムを聴きながら、煮昆布うどんを食べる。
あれから40年。
全部、つながった。
追記
久留米市出身の凌さんに敬意を表して、コンサート後の夕食は「久留米大砲ラーメン」。
どちらさまも、うっかりクリック。
いつも、ポチッと、ありがとうございます。
皆様のひと手間に感謝。励みになります!