野草採取で母が骨折
いつの日からか、千恵のライフワークは「食糧探し」になった。
その師匠は、僕の母である。
「秘密の場所を教えちゃるけん。誰にも言うたらいかんよ」
母はそう言って、千恵を山に連れ出した。
タダで食べる。その王道が野草採取。
みそ汁に入れて良し、天ぷらにしても良し。
佃煮にすれば長期保存も可能。
料理のバリエーションは豊富だ。
しかも、春の野草は体にもいい。
ほろりと苦味のある春の新芽を食すことで、冬の間にため込んだ体の毒が排出される。
いいことづくしの野草だが、買うと高い。
たとえば、ツクシは通販の相場では100グラム約500円。
野草ではないが、春の味覚の代表格であるタケノコはもっと高い。
田舎に住んでいたころ、タケノコなんて、買ったことがなかった。
タケノコはもらうものだった。
そんな都会暮らしに疑問を持つようになった千恵は、食糧探しにどっぷり浸かり、
「買わない生活」に魅せられていった。
ところが、昨年、不幸な事故が起きた。
千恵に「買わない生活」の醍醐味を教え込んだ母が右手首を骨折した。
僕とツクシを採りにいったときの出来事だった。
道路と田んぼの間の側溝を飛び越えようとして、足を滑らせ、1メートルほど下の田んぼに顔から転落。その際に右手を地面に打ちつけたのだ。
声をかけても、ぴくりとも動かなったので死んだのかと思った。
命は無事だったが、本当に驚いた。
聞けば、前年は、ため池に落ち込んで溺れかかり、周囲の人たちに助けてもらったそうだ。
母は82歳。
昨年、「もう、野草採取は終わりにせんとね」と約束していたはずだが、ことしも「ツクシいっぱい採ってきたけど、いらんね〜」と電話がかかってきた。
千恵が僕の母を師と仰ぎ、野草採りに勤しんでいたころのブログ。
2本続けてどうぞ。
ゴールデン初日(2007年4月28日)
福岡の北東方面に来ています。
今から、山へワラビとツワを摘みに。
夜ご飯が、楽しみです。
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今帰ってきました。
人のパソコン借りているので、写真は後ほど・・・
森林浴で生き返った感じ。
ワラビ大量、タケノコ少々(もう最後かな~)、今回ツワには手を出さず。
それから、スギナとヨモギを山ほど。
ヨモギは茹でて保存しておきます。ヨモギ餅、ヨモギ団子、ヨモギパン・・・と、おいしい想像がふくらみます。
スギナは干してから使いましょう。
途中、ヒラクチ(ヘビ)に遭遇。
草の中をす~っと這っていく後ろ姿を見ただけなんですけれど。
ワラビ摘みで会ったおじさんが、「ヒラクチのおっけん、気をつけんば」と。
「ヒラクチ」が、ヘビの名前とは知らなかったんですよね。
猛毒の持ち主らしいです。噛まれなくてよかった。
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ようやく帰宅(2007年4月28日)